自己流基板制作方法覚書き

 自己流の基板制作方法の紹介&覚書きです。
私は「コピー紙熱転写方式」で基板へのマスクパターンの転写を行っています。
レーザプリンタでマスクパターンをコピー用紙に印刷し、その紙をアイロンで基板に押付けることでトナーを基板に熱転写します。
感光基板に比べ感光、現像の道具が不要で、転写に失敗してもトナーを剥がすだけでやり直しできるメリットがあります。デメリットは微細パターンの転写が難しいことだと思いますが、0.5mmピッチパターンが作成できたので私的には充分です。
また、熱転写専用シート(Press-N-Peel)に比べ低価格なことと、Press-N-Peelのフィルム素材に対して紙なので熱転写でパターンが広がり難いのがメリットです。デメリットは熱転写後に紙を剥がすのに多少、苦労することでしょうか。

この方式の成功ポイントは、
 ①コピー用紙の選択
 ②プリンタの選択
 ③熱転写の方法(アイロンの設定、かけ具合)
 ④コピー紙の剥がし方


となりますが、全て先人様達が実験を積み重ね成功率の高い方法を編み出しています。
タイトルに自己流と書いていますが、先人様達の方法を真似させて頂いているだけです。
自身の成功例を紹介することで、先人様達への感謝の意とさせて頂きます。


1.コピー紙の選択

 多分、他に選択肢はありません。オンリーワンです。
  画采 マット仕上げ ファイングレード A4x100枚
  ヨドバシカメラ \357 


 基板製作では有名な"ぶどう"です。  

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2.プリンタの選択

 メーカーのコピー方式により、トナーを熱転写できないプリンタがあります。
 これはPress-N-Peel使用時の経験上、エプソン、キヤノンはOK、ブラザーはNGでした。
 私は小型、低価格な次のプリンタを購入しました。

  キヤノン A4レーザモノクロプリンタ LBP3000
  ヨドバシカメラ \15,800


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3.熱転写の方法

 (1)コピー機の設定
   特に設定なし。初期設定のままマスクパターンを印刷しています。
   今回は両面基板なので両面パターンを各々印刷。

 (2)基板の準備
   加工が容易な0.5mm厚の両面基板を使用しました。
   基板を必要な大きさ(基板サイズより少し大きめ)にカットし、スチールタワシで磨きます。

 (3)アイロンがけ準備
   アイロンの温度は"中"に設定。(National スチームアイロン 100V-700Wの場合)
   アイロン台は雑誌の上にタオルを敷いて代用。
   また、基板が入る大きさの皿に水を入れておきます。

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 (4)基板へのコピー紙貼付け
   基板にコピー紙を重ね合わせ、指に水をつけてコピー紙を軽く濡らします。
   この水が糊となり基板にコピー紙が貼り付きます。
   また、濡れた部分が透けてパターンを確認できるので貼付け位置が補正できます。
   水をつけ過ぎると紙が伸びてパターン寸法が変わるので要注意です。

   下の写真は水の付け過ぎで紙が伸びてしまった失敗例。

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 (5)アイロンがけ(1回目)
   アイロンは擦らず体重をかけ押し付けます。
   アイロン位置を動かし基板全体をまんべなく押付けます。
   1回目のアイロンがけはコピー紙の定着がメインなので紙が乾けばOKです。

   紙が乾き、パターンが透けなくなります。

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   ここで皿の水に基板を漬けます。パターンが透けるように、たっぷり水を吸わせましょう。
   トナーが基板に定着しているため、水で紙が伸びても、パターン寸法が変わることは(多分)ありません。

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 (6)アイロンがけ(2回目)
   またしても、アイロンは擦らず体重をかけ、基板全体を押付けます。
   基板の端は力が掛かり難いので、特に念入りに押付けます。
   逆に基板の真中は力が掛かり易く、押付け過ぎるとパターンが広がるので要注意です。
   細かいパターンがないのなら擦ってもOK。
   擦るとパターンが広がりやすいが、トナーの定着も良いので場所によって使い分けます。
   
   再び皿の水に基板を漬け、紙にたっぷり水を吸わせます。

 (7)紙を剥がす
   水の中で紙を剥がします。まずは大雑把に紙を剥がしていきます。
   パターンが転写できす、紙に残った場合は失敗です。スチールたわしで基板を磨き失敗パターン落とし、
   再度アイロンがけに挑戦です。

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   紙を剥がしても基板に薄い紙の膜が残りますので、これを指の腹で優しくこすり落とします。
   細かいパターンの間やパッドのドリル穴等に膜が残りやすいので丁寧に落とします。
   
   たまに基板を水から出し乾かします。
   基板が乾くと残ってる紙が白くなり確認し易くなります。
   再度、基板を濡らし紙をこすり落とします。

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 (8)基板裏面の転写
   両面基板の場合は裏面の転写も行います。
   まずは位置あわせのためピンバイスで4隅、真中あたりのパッドに穴をあけます。

   穴あけによるバリを削り、スチールタワシで今回の転写面を磨きます。

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   穴にあわせて紙を水で貼り付けます。
   紙を濡らすとパターンが透けて位置あわせが容易になりますが、
   紙が伸びないよう適度に調整が必要です。
   表面のパターンと多少ずれても大丈夫なように、貫通ビアは大きめのパッドにしてあります。

   あとは上記と同様に2回、アイロンがけし紙を剥がします。

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4.エッチング

 私はジプロックにエッチング液を入れエッチングします。
 洗面台に40℃くらいのお湯をため、先ほどの基板をジプロックに放込み湯煎状態で放置します。
 後はときどき袋を揺らしたり、揉んだりすればOKです。

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 エッチング後の基板
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5.基板カット、穴あけ

  基板のトナーを落とす前に基板のカット、穴あけを行います。
  0.5mm厚の基板を使用しているので、基板カットはハサミで大雑把に切り、ナイフで仕上げます。
  また、穴あけはピンバイスで行い、大穴はキリ、リーマで拡大します。
  部品実装穴は部品にあわせ、0.8/1.0/1.2mm、貫通ビアは0.5mmのドリルを使用します。

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6.基板仕上げ 

  スチールタワシで基板を磨きトナーを落とし、フラックスを塗ります。

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  最後に貫通ビアに線材を通して半田付けで完成です。

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 先人様達から授かった基板制作方法、如何だったでしょうか?
 レーザプリンタさえあれば手軽に基板製作できるはずです。
 是非お試しください。

<お・ま・け>
部品搭載後の基板。これが次回のネタです。

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以上


CANON Satera A4モノクロレーザー LBP3000
キヤノン
2006-03-10

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この記事へのコメント

  • そら。

    なるほど、そう言うやり方があるとは知りませんでした。

    それにしても、トナーってエッチング液に溶けないんですね。

    これなら手軽に作れそうですが、私の場合は穴あけも手間なのでどうかな・・・

    全てチップ部品という訳にはいかないしなぁ。

    たまに作るならOLIMEXか。
    2009年04月08日 09:03
  • Konya

    今すぐにでも作って実験したいという時は便利ですね。
    確実性や量産性を考えたら外注するのが吉ですかね。
    基板発注は未経験なので試してみたいとは思っているのですが...
    でもいきなり発注は怖いので、確認用としてやっぱり自作してしまうかも...
    2009年04月08日 22:45
  • マツモト

    綺麗にできますね。参考にさせていただきます。
    0.5mmピッチOKと言うことは、0.5mmピッチのICパターンがOKと言うことでしょうか。 もしそうなら、その時のパターン幅を教えていただけますか?
    私も、「ぶどう」の用紙を買って、準備中です。(スーパーに用紙を持ち込んで、コピー機でこっそりコピー。)
    2009年04月20日 16:04
  • Konya

    0.5mmピッチのLCD用コネクタのパターンを作成できましたので、ICも可能と思われます。
    ただしコネクタは20ピンだったので64、100ピン等は未知の世界です。
    また、そのときのパターン幅は0.25mmです。
    実際にはトナー潰れにより少し広がると思います。

    トナーを熱転写できないコピー機もあるのでご注意を。
    では、成功を祈ってます。
    2009年04月22日 21:33
  • マツモト

    こんにちは
    何度か、コピーによるトナー熱転写して、エッチングもしてみました。
    紙繊維を綺麗にするのが、うまく出来ませんでした。
    そして発見!!!
    紙を濡らしてはかした後、薄皮が残りますよね。
    それを一晩(8時間ほど)、水につけておきました。
    消しゴムでそっとこすると、綺麗に剥がれます。
    繊維は殆ど残りません。 簡単に剥がれるので、トナーのダメージは、
    全くと言って良いほどありません。
    お試しください!
    2009年11月06日 10:25
  • Konya

    おぉ、試してみます。
    情報感謝です。
    2009年11月11日 18:19
  • Konya

    ご紹介ありがとうございます。
    Press-N-Peelには勝てない部分もありますが、リーズナブルで良い方法ですよね。この方法を編み出した先人様に感謝です。
    2010年02月09日 22:00
  • おーすけ

    こちらの記事を参考にさせていただき、Press-n-Peelでの転写に成功しました。
    ありがとうございました!!
    ブログの方でも紹介させていただきました。
    http://osukekun.blog11.fc2.com/blog-entry-116.html
    2010年03月17日 18:48

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